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AR モデル

2026-06-18 ・ SAWADA時系列解析計量経済学

AutoRegression (AR) の基本 ​

ARモデル:現在の値を、過去の自分自身の値で説明する時系列モデル

前提知識 ​

  • yt:時点tにおける観測値(確率変数)
  • 弱定常性∀t,∀k:E[yt]=μ∧Cov(yt,yt−k)=E[(yt−μ)(yt−k−μ)]=γk
    • 異時点間のデータ間の線形依存関係が時点tに依存せず時間差kにのみ依存することを要求
  • 強定常性∀t,∀k:(yt,yt1,…,ytr)の同時分布が同一
    • 異時点間のデータ間の全ての形の依存構造が時点tに依存せず時間差kにのみ依存することを要求
  • 強定常性⇒弱定常性
  • ホワイトノイズ
    確率過程{yt}がホワイトノイズとは以下を満たすこと
    1. {yt}が弱定常
    2. E[yt]=0
    3. cov(yt,yt−j)=0forj≠0
  • マルチンゲール差分系列(MDS)
    E[yt]=0を満たす過程{(yt,Ft)}は次の条件を満たすときMDSと呼ばれる(Fは情報集合)E[yt|Ft−1]=0

モデル ​

  • AR(1):yt=v+ϕ1yt−1+ϵt
  • AR(p):yt=v+ϕ1yt−1+⋯+ϕpyt−p+ϵt
    • ϵt:ホワイトノイズ仮定 (ϵt∼W.N.(σ2)で分散σ2のホワイトノイズに従うことを表現できる)
  • lag polnoymial ϕ(L)=1−ϕ1L−⋯−ϕpLp を用いて以下のように表すこともできる
ϕ(L)yt=v+ϵt
  • 定理
  1. μ=E[yt]=v1−ϕ1−ϕ2−⋯−ϕp
  2. γ0=var(yt)=σ21−ϕ1ρ1−ϕ2ρ2−⋯−ϕpρp
  3. 自己共分散と自己相関はyt(Yule-Walker方程式)
γk=ϕ1γk−1+ϕ2γk−2+⋯+ϕpγk−pρk=ϕ1ρk−1+ϕ2ρk−2+⋯+ϕpρk−p

4.AR過程の自己相関は指数的に減衰する

AR(p)の定常条件 ​

AR(p)モデルを以下のように書く

ϕ(L)yt=v+ϵt

ただしϕ(L)=1−ϕ1L−⋯−ϕpLp このときAR(p)が定常であるための条件は

ϕ(z)=1−ϕ1z−⋯−ϕpzp

のすべての根が単位円の外側にあること、すなわち|zi|>1がすべての根について成り立つこと

AR(1)の定常条件 ​

yt=v+ϕ1yt−1+ϵtϵt∼W.N.(σ2)

の定常条件

  • AR特性方程式はz=ϕ1−1で与えられる
  • |ϕ1|<1のとき|z|>1となり解の絶対値が1より大きくなるのでAR(1)の定常条件は|ϕ1|<1

AR(p)の定常条件 ​

  • AR特性方程式1−ϕ1z−⋯−ϕpzp=0の全ての解が1より大きいとき、AR過程は定常になる

推定 ​

  • AR(p)モデルは線形回帰で表せるyt=xt′β+ϵt
    • β=(v,ϕ1,…,ϕp)′, xt=(1,yt−1,…,yt−p)′
  • ϵtがMDSであることを仮定すると、xt,ϵtは無相関
  • OLS推定量は、β^=(∑t=p+1Txtxt′)−1∑t=p+1Txtyt

性質 ​

  • 安定性のもとで、ytは強定常でエルゴート性をみたす
  • 一致性:LLNとMDSの性質よりβ^→β
  • 漸近正規性:E[ϵt4]<∞ ならばCLTよりn(β^−β)→dN(0,E[xtxt′]−1E[xtxt′ϵt2]E[xtxt′]−1)

補足 ​

  • AR(p)の次数pはAICやBICに基づいて決める

AR の由来 ​

  • Yule-Walker方程式のおじさんたちが導入・発展させた
  • Yule(1927)
    • 太陽黒点のような周期性を持つ時系列を、決定論的な周期関数にノイズを足したものではなく、過去の値とランダムな錯乱に依存する過程として扱った
    • AR(2)による周期的モデリングを導入ut=aut−1+but−2+c+ϵt
  • Walker(1931)
    • Yule(1927)の自己相関的な時系列モデルを受け、系列の自己相関係数の列を使って周期性を調べる方法を展開
    • 系列utが自己回帰的関係を持つなら、ラグpの自己相関係数rpも近似的に同じ係数を持つ差分方程式に従うことを主張(後のYule–Walker方程式)
    • 実証ではダーウィン港の気圧データを分析
  • Slutskyも理論確率に貢献
  • その後Wold分解、Box-JenkinsによってARMA/ARIMAへ体系化

演習 ​

AR(1) ​

自己相関関数 (ACF) ​

理論 ​

  • 時系列に定常性を仮定すると平均値関数μnは時刻nに依存しない一定の値となり、μ=E[yn]と表せ、これを時系列ynの平均と呼ぶ
  • yn,yn−kの共分散Cov(yn,yn−k)は時間差kだけに依存する量となり、Ck=Cov(yn,yn−k)=E[(yn−μ)(yn−k−μ)]と表せ、自己共分散関数と呼ぶ。kはラグとも呼ばれる
    • 自己共分散関数は偶関数(Cl=c−l)で|Ck|≤C0が成り立つ
  • yn,yn−kの相関係数Rk=Cov(yn,yn−k)Var(yn)Var(Yn−k)をラグkの関数とみなしたものを自己相関関数と呼ぶ
    • 定常時系列の場合Var(yn)=Var(Yn−k)=C0が成立するので、自己相関関数は自己共分散を用い、Rk=CkC0と表せる
  • 定常時系列{y1,…,yN}が与えられたとき、平均、自己共分散関数、自己相関関数は以下のように推定できるμ^=1N∑n=1NynC^k=1N∑n=k+1N(yn−μ^)(yn−k−μ^)R^k=C^kC^0
  • コレログラムとは標本自己相関を図示したもの:横軸k、縦軸k次の標本自己相関

コード ​

  • 標本自己共分散を求める(C^k=1N∑n=k+1N(yn−μ^)(yn−k−μ^))
    python
    def sample_autocovariance(y, max_lag):
      y = np.asarray(y)
      n = len(y)
    
      mu_hat = np.mean(y)
    
      autocovariances = []
    
      for k in range(max_lag + 1):
          cov_k = np.sum((y[k:] - mu_hat) * (y[:n - k] - mu_hat)) / n
          autocovariances.append(cov_k)
    
      return np.array(autocovariances)
  • 標本自己相関を求める(R^k=C^kC^0)
    python
    def sample_autocorrelation(y, max_lag):
      autocovariances = sample_autocovariance(y, max_lag)
    
      autocorrelations = autocovariances / autocovariances[0]
    
      return autocorrelations
  • ϕ=0.1:明確な周期性なし
  • ϕ=0.5:明確な周期性なし、自己相関の減衰はある
  • ϕ=0.9:強い正の自己相関の減衰が観測される

定常性 ​

  • 前提知識の項より、|ϕ1|<1のときAR(1)は定常
    • ϕ=−0.5,0.99:定常
    • ϕ=1,1.01:定常でない

AR(2) ​

  • 定数項なし:yt=ϕ1yt−1+ϕ2yt−2+ϵt
  • コードは
    python
    def simulate_ar2(phi1, phi2, n=300, sigma=1.0, seed=123):
      np.random.seed(seed)
    
      e = np.random.normal(0, sigma, n)
      y = np.zeros(n)
    
      for t in range(2,n):
          y[t] = phi1 * y[t-1] + phi2 * y[t-2] + e[t]
      return y
  • (ϕ1, ϕ2) = (1.10, -0.24), (1.80, -0.81), (1.20, -0.70), (1.30, -0.30)のシュミレーション

AR(2)の振る舞いの理由 ​

  • まず、前提知識の項より、yt=ϕ1yt−1+ϕ2yt−2+ϵtの定常性条件は以下ϕ2>−1ϕ2<1+ϕ1ϕ2<1−ϕ1
    • (1.10, -0.24), (1.80, -0.81), (1.20, -0.70):定常
    • (1.30, -0.30):定常でない
  • 証明
    • AR特性方程式1−ϕ1z−ϕ2z2=0の解(特性根)は、解の公式より、
    Z=−ϕ1±ϕ12+4ϕ22ϕ2
    • この絶対値1より大きくなる条件を考えると上を得る。

行列を用いる ​

  • 状態ベクトルでかく(ytyt−1)=(ϕ1ϕ210)(yt−1yt−2)+(ϵt0)
    • ここでA=(ϕ1ϕ210)は遷移行列
  • 行列Aの固有値を求める(計算略)
(ϕ1,ϕ2)固有値定常振動
(1.10,-0.24)(0.80, 0.30)定常しない
(1.80,-0.81)(0.90, 0.90)定常しない
(1.20,-0.70)(0.60±0.583i)定常する
(1.30,-0.30)(1, 0.30)非定常しない
  • Aの固有値の逆数とAR特性方程式1−ϕ1z−ϕ2z2=0の解は一致する!
  • 固有値の定常条件は、Aの全ての固有値λ1,λ2が単位円の内側にあること、つまり|λ1|<1,|λ2|<1
    • det(A−λI)=0という特性方程式を考えると、λ2−ϕ1λ−ϕ2=0
    • 解は、λ=ϕ1±ϕ12+4ϕ22
    • この解が共に単位円の中にある条件を考えると、AR特性方程式により導出した条件に一致する
  • 振動する条件は、固有値が複素数になること、つまりϕ12+4ϕ2<0